ご存知の通り、大人気コミック「東京喰種トーキョーグール」。
コミックだけではなく、コミカライズ、TVアニメ、実写映画とメディアミックスされ尽くされた有能コンテンツ。
そういう僕も1番好きなマンガは?と聞かれれば東京喰種を挙げます。
無印のラスト2巻は本当にゾクゾクする展開。
隻眼の梟が現れたシーンはちょっと胃液が出た。
そんな東京喰種の作者である石田スイ先生は音楽好きであり、TVアニメの主題歌を自らチョイスするジャンキー。
執筆しながらthe cabsの「二月の兵隊」を延々聴くようなお方。
その音楽嗜好もちょっと歪な、大衆音楽とは少し違うところがまた良い。
待てよ、そんな石田スイ先生がチョイスしたバンドの曲が格好良くない訳がない。
東京喰種の主題歌だけ聴いていれば耳が幸せになるんじゃないのか?
TK from 凛として時雨 / unravel第1期のOPは凛として時雨のVo/GtであるTKのソロ活動としての楽曲。
「腹から声出せ」の名言を生んだこの曲は、東京喰種のような歪んだ、悲しげな世界観とマッチする。
「教えて 教えてよ その仕組みを 僕の中に誰がいるの?
壊れた 壊れたよ この世界で 君が笑う 何も見えずに」
という歌詞も人間から喰種の生活に足を踏み入れてしまった主人公である金木研の心情を表現している。
People In The Box / 聖者たち残響レコード所属のPeople In The BoxがEDテーマを担当した第1期。
ゆったりとしたテンポに複雑なベースラインが耳に残る。
この曲も
「まだ空っぽな明日は 限りなく黒に近いグレイ
なにかにもなれずに 限りなく黒に近いグレイ」
という歌詞が出てくる。
元人間の半喰種としてどちらの世界にも身を置けずに苦悩する金木研を表しているのではないだろうか。
いいですよね、こういう風に歌詞の中に主人公の気持ちを入れてくれるの。
原作への愛が伝わってきます。
österreich / 無能第2期のOPを飾ったのはösterreichの「無能」。
österreichって誰だよ、となった方も多いと思うが、冒頭に挙げたthe cabsのメンバーであり作詞、作曲、ギターを担当しバンド解散の原因となった高橋國光のソロ名義である。
正直、このösterreichが、高橋國光が再び表舞台に戻ってくるという発表には喜ばされた。
僕がthe cabsのファンであり、高橋國光の作り出す複雑怪奇な音楽と世界観が大好きで、またこの人の曲が聴けるのかと。
この「無能」も例に漏れず不協和音を多用したマスロックをベースとした聴くと不安になる楽曲。
この復活も石田スイ先生がthe cabsの大ファンであり、高橋國光に熱望して実現したというから恐れ入る。
ただ一つ言わせてもらうのであれば、この曲はEDのほうが合ってない?
the cabsとösterreichの過去記事
→
the Cabs以上のマスロックバンドは出て来るのか / おすすめ曲紹介→
アニメ「東京喰種:re」のEDテーマに再び抜擢されたösterreich(オストライヒ)/高橋國光を振り返る
amazarashi / 季節は次々死んでいく第2期のEDはamazarashiの「季節は次々死んでいく」。
心に直接入り込んでくる真っ直ぐなメロディと歌声。
歌詞も言葉の一つ一つが文学的で、小説がキーとなる東京喰種に上手く絡ませているように思える。
何より、MVを完全に東京喰種に寄せている点。
重要人物である神代リゼを思わせる女性が生肉を食べ続けるのだが、最初は行儀良くナイフとフォークを使っているが曲が進む内に手掴みで貪り食らう。
まるで理性を失った喰種のような演出となっており、原作の世界観を表現している。
ここまでタイアップに合わせるMVも珍しく、愛を感じずにはいられない。
ただ一つ言わせてもらうのであれば、この曲はOPのほうが合ってない?
Cö shu Nie / asphyxia第3期となる「東京喰種:re」のOPであるCö shu Nieの「asphyxia」。
今ではかなり名の広まったCö shu Nieだが、当時はよくこんなバンド見つけてくるな…と思った。
大阪を拠点に活動する変拍子を多用する楽曲が特徴で、ロックもポップも垣根を超えた新進気鋭バンド。
歌詞の内容については、石田スイ先生との打ち合わせを行って書かれたもの。
この曲も直接的ではないが東京喰種の世界観、金木研の生き方が表現されている。
終盤で「笑える」という一言が入ってくるのだが、それが神代リゼを思わせることにゾワッとした。
個人的にこの東京喰種の主題歌を通じてCö shu Nieを知れたことは大きな収穫だった。
いや、本当に才能溢れるバンドで聴く曲聴く曲すべてが良い。
中村未来がボーカル、ギター、ピアノ、マニピュレーター、作詞、作曲…と何でもやるウーマンで、天才って本当にいるんだなと。
Cö shu Nieについては過去の記事を参照していただければと。
→
今のうちに知っておいた方が良い、Cö shu Nie→
[全曲レビュー] 聴き手を置いてきぼりにする変拍子バンドCö shu NieのEP「Aurora」
女王蜂 / HALF第3期のEDは女王蜂が担当。
曲名の「HALF」というのも半喰種である金木研からもじっているのであろう。
今までの主題歌とは少し毛色が違って、ゴリゴリのロックナンバー。
切なさや憂いを感じさせる楽曲が多かった流れを女王蜂が断ち切った。
MVには東京喰種らしい仮面を付けたメンバーが出演。
アニメのオークション掃討戦編を思わせるセットも原作愛が感じ取れる。
女王蜂を知った当初、アブちゃんの性別が分からずググりまくって真相究明してたよね。
でも、そんなことはどおでもいいんだよ。
アブちゃんはアブちゃんだよ。
TK from 凛として時雨 / katharsis最終章となる第4期ではTKがOPとしてカムバック。
「katharsis = カタルシス」は「浄化」を意味し、長かった悲劇の物語が終わりに向かうような楽曲。
TKが東京喰種に関わった曲って、直接的ではなく暗に混沌とした東京喰種の世界観を書いているんですよね。
この最終章も世界が終わってしまうような雰囲気で話が進んで行くなかでのこの楽曲は本当に秀逸。
もう誰にも「腹から声出せ」なんて言わせねぇ。
österreich / 楽園の君第4期のEDは高橋國光のソロ名義であるösterreichが再び担当。
この頃にはすっかり石田スイ先生と高橋國光との絆が深まっていて、2人で遊びに行ったという報告がTwitterに挙げられていたのも嬉しい思い出。
ゲストボーカルにはcinema staffの飯田瑞規を迎え、最後を締めるに相応しい優しく、そして切ない気持ちにさせられる曲。
正直、この曲には衝撃が多すぎて、嬉しいことが多すぎて高橋國光やってくれたな感が。
「楽園の君」については過去記事で嬉しい思いを延々と書いているので、参照していただければと。
→
何年も待ち望んだ高橋國光と飯田瑞規の共演がついに実現。アニメ 東京喰種:reのEDを担当するösterreich(オストライヒ)が「楽園の君」のMVを公開、先行リリースも発表
さて、ここまで全8曲、6バンドをまとめてみたが、石田スイ先生の「自分の考える最強のバンドを集めてアニメの主題歌作ってみた」がすごい。
いや、これディスとかじゃなくて本当に素晴らしいバンドをよくぞここまで集められたなと。
曲の嗜好も読み取れるし、こういう曲を聴きながら東京喰種を作り上げてきたんだなとバックグラウンドが想像できてくる。
あとは何よりバンド側の原作愛がすごい。
すべてのバンドが東京喰種に関連する要素を含ませているって、そこらのアニメじゃ見られない現象。
全バンドが原作をリスペクトしているのが伝わってくる。
原作も幸せなエンディングを迎え、惜しまれながらも連載終了となった東京喰種。
漫画、アニメが面白いことはもちろんなので是非一度読むなり観るなりしてもらいたい。
そこでもし興味が湧いたのであれば、石田スイ先生直々にオファーを出した主題歌達、そのバンドにも耳を傾けてもらえたら幸いかなと。
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