個人的イチオシ曲はTr.3「My Own Worst Enemy」で、激しいイントロからAメロ、Bメロと進んでいき、サビでぶち上げるかと思いきや突如として違う曲かのように美しいメロディを奏でる落差が癖になる。
A World Of Pandemonium
またもや約1年という驚異のスパンで2011年にリリースされた3作目の「A World Of Pandemonium」。 はっきり言うと、このアルバムからthe HIATUSの方向性が固まったかな、と思う。 固まったというか、「らしさ」が詰まっているかな。 優しさとか心の暖かさが感じられるような。 食べ物でいうとおかゆだけど、それだけじゃ物足りないから少し梅干しが入ってるような。 そんな、聴けば心が穏やかになる曲が揃ったアルバムという印象。
オーケストラツアーを挟んだこともあってか、少しペースを落とし約2年半振りの2014年に発売された4作目「Keeper Of The Flame」。 1〜3作目をthe HIATUSの第1部、4作目であるこのアルバムから第2部としていいかもしれない。 というのも、これまでキーボード/プロデュースを担当していた堀江博久がソロ活動に専念するため脱退。 今までもレコーディング、ツアーに参加していた伊澤一葉(ex.東京事変)が就任した。 伊澤一葉が加わってのことなのかは定かでないが、かなり前衛的なアルバムだなと思う。
毛色としては4枚目である「Keeper Of The Flame」で挑戦したサウンドの発展系であり、細美武士曰くthe HIATUSで目指すサウンドとしては一旦の完成系。 Wikipediaには「時代性や音楽を取り巻く環境の変化を反映させたロックバンドのサウンドデザインの更新」をテーマとしたって書いてあるんだけどさ、もうアーティストってよりも研究者っぽい境地に踏み込んでる。 確かに、サブスクリプション時代に突入していることを考慮し中音域より上の歪んだ音を削ったようなことが書いてあるんだけど、先に挙げた「Regrets」なんかは顕著で僕が気になったのはバスドラムのアタック音が聴こえない/削られてるんですよね。 アタック音ってのは足でキックペダルを踏んでバスドラムを鳴らす時に、キックペダルのビーター(ググってね♡)とバスドラムのヘッド(ググってね♡)が当たった瞬間の「バチッ」という音のことで、割とPAやレコーディングエンジニアはこの部分を聴かせたがる。 そこを削ることによって生演奏でありながら打ち込みのような低音感が得られているし、ロックバンドでありながらもロックバンドらしさを感じさせない印象を受ける。
また音楽ジャンルで分けるには難しい路線を進んできたし、ファンも一瞬狼狽してしまいそうな曲を作ってきたなと。 右ストレートと思わせての左ブローを打たれたような今作は、暴れたい盛りの「パンク/ロックバンド」が好きな層には受けが悪そうに思える。 ただこれではっきりしたことは、the HIATUSは決してジャンルに囚われるバンドではないし、時代に伴いファンの求めるものに伴いサウンドを更新/変化し続けるスタイルだということ。 the HIATUSが早足で進み続ける速度に遅れを取らないよう一緒についていくこともファンとしての務めかなとも思う。