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the HIATUSの10年間と6枚のアルバムを辿る 

2019年で活動10周年となるthe HIATUS。
もう10年経ったのか…!?と思ってしまうほど時間の流れは早いし、ELLEGARDENが復活するまで10年かかったと思えば気が遠くなるほど長かったような気もする。
細美武士がELLEGARDENの活動休止後に誰とどのようなバンドを始めるのだろうか…とドキドキしたのも10年前ですよ。
皆さん、良い10年間を過ごせましたか?

さて、節目となる10年までにthe HIATUSは計6枚のスタジオアルバムを世に送り出しています。
ファンである僕としてはどのアルバムもそれぞれ特徴的で独創的で聴き込めば聴き込むほどに良さが出てくる素晴らしいものでしかない。
盲目的な発言ばかりになるかもしれないけど、その10年間にリリースされた6枚のアルバムを順に辿って、そのthe HIATUSの変化を聴きとっていきたい。
嬉しいことについ先日全アルバム全シングルをサブスクリプション配信を解禁したので、「ELLEGARDENは大好きだけど、the HIATUSはあまり知らない。」という不届き者もこの機会に触れてみたらいいんじゃない?




Trash We'd Love
Trash Wed Love


2009年に発売された記念すべき第1作目である「Trash We'd Love」。
ELLEGARDENが活動休止して他のメンバーは続々と新しい活動の報告が上がってくるなかで、1番最後の動き出しとなった細美武士のバンド、というよりもプロジェクトであるthe HIATUS。

やはりパンクロック路線で来るだろう、とクラウチングで構えていたキッズをヒラリマントで跳ね返した本作。
パンクロックというよりはオルタナティブロックであり、どことなく芸術を感じられる音楽性で「あ、ELLEGARDENとは別物だと考えたほうがいい」と思った記憶がある。
恐らく「ELLEGARDENは大好きだけど、the HIATUSはあまり知らない。」勢はここで、期待していたものと違う…と肩を落としたのが原因じゃないかな。

確かにアルバム全体としてはしっとりとした落ち着いた曲が多い印象。
ただ、「細美武士ってこういう曲も作れるのか…!」という驚きの方が大きかった。
キーボードが加わったことによって音楽性の幅が格段に広がったな、と感じさせられる。
繊細で美しく、時には激しく躍動し、心の底に溜まった泥を掻き出してくれるような音楽が詰まった作品。
ELLEGARDENのパンクと、the HIATUSのアートが試行錯誤しながら半々で混ざっているような印象。



とはいえ、Tr.8「The Flare」を筆頭に盛り上がれる曲も揃っている。
この曲のCメロが秀逸すぎるんですよ…




ANOMALY
ANOMALY.jpg


前作から約1年経った2010年にリリースされた「ANOMALY」は、また違った顔を見せる。
「Trash We'd Love」では繊細で芸術的な一面を持っていたが、今作は荒々しい激情のようなものを感じる。
Tr.1「The Ivy」のイントロで轟音のように全楽器を搔き鳴らしながらアルバムが始まるのが非常にインパクトが強い。

全体的に歪んだギターのリフから始まる激しい曲が多く、「あれ、前作のような美しい芸術性はどこへ…?」と思ってしまうが、これはこれで一種の芸術なのだと思う。
綺麗なものだけが芸術じゃないぞ、と。
手探りの中作り上げた前作を経て、掴み取ったものをぶつけているような荒々しさはthe HIATUSの6枚のアルバムでも1番だと。
リリースツアーに参戦したんだけどさ、だいたいの曲でモッシュとダイブ起きてたもの。

個人的イチオシ曲はTr.3「My Own Worst Enemy」で、激しいイントロからAメロ、Bメロと進んでいき、サビでぶち上げるかと思いきや突如として違う曲かのように美しいメロディを奏でる落差が癖になる。




A World Of Pandemonium
A World Of Pandemonium


またもや約1年という驚異のスパンで2011年にリリースされた3作目の「A World Of Pandemonium」。
はっきり言うと、このアルバムからthe HIATUSの方向性が固まったかな、と思う。
固まったというか、「らしさ」が詰まっているかな。
優しさとか心の暖かさが感じられるような。
食べ物でいうとおかゆだけど、それだけじゃ物足りないから少し梅干しが入ってるような。
そんな、聴けば心が穏やかになる曲が揃ったアルバムという印象。

個人的には6作の中ではこのアルバムが断トツに好み。
尖り過ぎず、丸過ぎず、絶妙なバランスで進んでいくアルバム曲が絶妙な心地良さを作り出してくれる。
今作の特徴として、アコースティックギターの音色が随所に聴こえてくるところだと思う。
Tr.1「Deerhounds」が分かりやすくアコースティックギターに比重を置いて曲が作られている。
エレキギターとは違った暖かみのある音がアルバムの優しげな印象を際立たせている。

そして、このアルバムの全国ツアーが終わった後にオーケストラを加えて行われた「The Afterglow Tour」もぜひ聴いてもらいたい音源の一つ。
これまでの楽曲にオーケストラのアレンジを加え、また一味違った表情を見せてくれる。



芸術とかおしゃれとか大人とか散々言葉にしてきたけど、このツアーが集大成であると思う。
もうね、本当に生でライブ観られなかったことを一生後悔するくらい良かった。
BDで発売してくれて本当に感謝しかない。
この綺麗なコーラスの女性は誰なんだろう…
ほう、坂本美雨さんか…
坂本龍一の娘!?
となるところまでがワンセット。




Keeper Of The Flame

Keeper Of The Flame


オーケストラツアーを挟んだこともあってか、少しペースを落とし約2年半振りの2014年に発売された4作目「Keeper Of The Flame」。
1〜3作目をthe HIATUSの第1部、4作目であるこのアルバムから第2部としていいかもしれない。
というのも、これまでキーボード/プロデュースを担当していた堀江博久がソロ活動に専念するため脱退。
今までもレコーディング、ツアーに参加していた伊澤一葉(ex.東京事変)が就任した。
伊澤一葉が加わってのことなのかは定かでないが、かなり前衛的なアルバムだなと思う。

これまでのバンドサウンドとは打って変わり、エレクトロニックな要素が強く出ている。
キーボードはピアノというよりシンセサイザーとしての役割が多く、細美さんもギターを弾くよりシンセサイザーを触っている時間の方が長い。
前作でthe HIATUSとしての音楽性が固まったな!っと思った矢先にぶっ壊して新しい音楽に挑戦するその姿勢がthe HIATUSらしさじゃないかと思わされる。
一生ついて行きます、と誓ったファンであっても困惑を隠せないほどの方向転換っぷり。

とはいえ、この新しいサウンドもなかなか良いもので、細美さんが狙っていた「踊れる」という要素が縦ノリを生んで聴いていても飽きが全く来ない。
Tr.2「Something Ever After」はミドルテンポで落ち着いたメロディながらも、勝手に体は動いちゃうし、歌いたくなってしまうしで細美さんの思う壺。

Tr.8「Tales Of Sorrow Street」は2011年に発生した東日本大震災で被害に遭われた方へ向けて歌った曲で、特に復興へ力を注いでいる細美武士としては思いの込もったものではないのかと。
元々は細美武士がソロの弾語りとして作った曲を、今作でアレンジを加えて収録した…という情報をどこかで読んだような読んでいないような。
ソースはないです、間違っていたらごめんなさい。




Hands Of Gravity

Hands Of Gravity


バンド初の日本武道館公演を成功させ、2016年に発売された5作目「Hands Of Gravity」では、前作で際立っていたエレクトロニックなサウンドからバンドサウンドへと戻している。
どことなく1作目と似た雰囲気を持ち、原点回帰をしたようなアルバムに感じる。

前作「Keeper Of The Flame」が実験的で挑戦的な要素が強過ぎたアルバムだった為に、今作が物足りなく思えてしまうのもしょうがない。
これが化けの皮を剥がした本来のthe HIATUSとしての姿であろう。

細美武士史としては前年の2015年にMONOEYESを結成し、皆から待たれていたパンクロックを放出する場が出来た。
これによって、the HIATUSはthe HIATUSとしてやりたいことを作り上げていくことが出来るようになったのではないかと。
「Jive Turkey」と名付けられたブルーノート、ビルボードで行われた公演では、食事を楽しみながらお酒を飲みながらライブを楽しむスタイルで行われ、ジャズのようなアレンジも加えられた一味違ったものとなっていた。
こんな公演もthe HIATUSだからこそ出来るものであると思う。
映像作品としてリリースもされているから、必聴の一枚。
職業柄、どうしても音響/PAのほうに目と耳が傾きがちなんだけど、随所に技が光っていて感動してしまった。




Our Secret Spot
Our Secret Spot


2019年に節目となる結成10周年を迎え、発売された6枚目の「Our Secret Spot」。
発売前に公開されたTr.3「Regrets」のMVを聴いて誰しもが思ったはずだ。
「あ、これまた新しいサウンドに挑戦しておしゃれになるアルバムだ」と。



毛色としては4枚目である「Keeper Of The Flame」で挑戦したサウンドの発展系であり、細美武士曰くthe HIATUSで目指すサウンドとしては一旦の完成系。
Wikipediaには「時代性や音楽を取り巻く環境の変化を反映させたロックバンドのサウンドデザインの更新」をテーマとしたって書いてあるんだけどさ、もうアーティストってよりも研究者っぽい境地に踏み込んでる。
確かに、サブスクリプション時代に突入していることを考慮し中音域より上の歪んだ音を削ったようなことが書いてあるんだけど、先に挙げた「Regrets」なんかは顕著で僕が気になったのはバスドラムのアタック音が聴こえない/削られてるんですよね。
アタック音ってのは足でキックペダルを踏んでバスドラムを鳴らす時に、キックペダルのビーター(ググってね♡)とバスドラムのヘッド(ググってね♡)が当たった瞬間の「バチッ」という音のことで、割とPAやレコーディングエンジニアはこの部分を聴かせたがる。
そこを削ることによって生演奏でありながら打ち込みのような低音感が得られているし、ロックバンドでありながらもロックバンドらしさを感じさせない印象を受ける。

また音楽ジャンルで分けるには難しい路線を進んできたし、ファンも一瞬狼狽してしまいそうな曲を作ってきたなと。
右ストレートと思わせての左ブローを打たれたような今作は、暴れたい盛りの「パンク/ロックバンド」が好きな層には受けが悪そうに思える。
ただこれではっきりしたことは、the HIATUSは決してジャンルに囚われるバンドではないし、時代に伴いファンの求めるものに伴いサウンドを更新/変化し続けるスタイルだということ。
the HIATUSが早足で進み続ける速度に遅れを取らないよう一緒についていくこともファンとしての務めかなとも思う。

今作からサブスクリプションでの配信も開始したことも大きな出来事ではないかと。
リリース日に同時配信されたことはもちろんのこと、後日には過去のシングル・アルバムすべてが解禁となった。
サブスクリプションで音楽を聴く、ということが世界的に普及し始め当たり前になってきたからこそ時代に合わせたということであろう。
旅行先でiPodを忘れたか紛失した細美さんがしぶしぶ試しにサブスクリプションを利用したところ「すげぇ便利!」と感嘆したことも大きいのかもしれない。(Twitterでちらっと見かけた情報です、間違ってたらごめんなさい…!)




ざっくりではあったけど、10年間と6枚のアルバムに対してのほとんど個人的な感想である。
日本においてここまで試験的、挑戦的なことをアルバム単位でぶつけてくるアーティスト/バンドそうそういないのではないかと。
それによってアルバムごとに特色が出て来ており、アルバムそれぞれに愛着が出てくる。
「Regrets」のMVでメンバー全員映るけどさ、最高にハイパー格好良いおじさん5人組だよね。
ウエノコウジが50代って、なんかもう渋すぎるでしょ。

長かったような短かったような、そんな10年間であったがまずはバンドが10年続いてくれたことに感謝したいし、この先15周年、20周年と節目節目を共に歩んでいきたいと心から思えるバンドの1つです。

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( 2019/08/22 05:35 ) Category 邦楽 | TB(0) | CM(0)
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